手足口病は、手のひら、足の裏、口の中などに特有の発疹や水疱(すいほう)ができるウイルス性の感染症です。一般的には「子どもの夏風邪」というイメージが強いかもしれません。しかし、実は大人が感染することもあり、大人の場合は子どもよりも症状が重くなりやすい傾向があります。

「ただの風邪だと思っていたら、手足に激しい痛みが出て動けない」「口の中の口内炎が痛くて食事がとれない」と、当院の内科を受診される成人患者さんも少なくありません。

本記事では、大人の手足口病の初期症状、感染経路、そしてかかってしまった場合の対処法について、内科医の視点から詳しく解説します。

大人の手足口病の初期症状とは?

大人が手足口病に感染した場合、初期症状は一般的な風邪と非常に酷似しています。そのため、初期の段階で自分で手足口病だと気づくことは困難です。

全身のだるさと発熱

最初の1〜2日は、なんとなく体がだるい、寒気がする、といった全身倦怠感から始まります。その後、38度前後の発熱がみられることがあります。ただし、大人では熱が出ないケースや、微熱程度で済むケースもあります。

喉の激しい痛み

発熱とほぼ同時、あるいは少し遅れて、喉の強い痛みが現れます。口の奥や粘膜に小さな水疱ができ、それが破れて潰瘍(口内炎)になるためです。唾液を飲み込むだけでも強い痛みを伴うのが特徴です。

手足の発疹・水疱

発熱から1〜2日遅れて、手足に特徴的な発疹が出現します。

  • 出やすい場所: 手のひら、足の裏、手足の甲、指の股。場合によってはお尻や膝にできることもあります。

  • 見た目の特徴: 2〜3ミリの米粒大の、やや盛り上がった赤い発疹や、真ん中が白っぽい水疱です。

  • 大人の特徴: 子どもの場合はあまり痛まないことが多いですが、大人の場合は「針で刺されたようなピリピリとした強い痛み」や「痒み」を伴うことが多く、歩行やスマートフォンの操作に支障が出ることもあります。

なぜ大人が手足口病にかかるのか?(感染経路)

手足口病の原因となるのは「コクサッキーウイルス」や「エンテロウイルス」といった腸管ウイルスの一種です。大人が感染する主な原因は、主に以下の2つです。

子どもからの家庭内感染

最も多いのは、保育園や幼稚園、学校などで感染したお子さんの看病や世話を通じた家庭内感染です。オムツの交換、タオルの共有、食べ残しを食べる行為などでウイルスが親に移動します。

免疫力の低下

手足口病のウイルスは複数の型があるため、過去にかかったことがあっても、別の型のウイルスであれば大人が再感染します。仕事の疲れや寝不足、ストレスなどで免疫力が低下しているときに感染しやすくなります

主な感染経路は、飛沫感染(咳やくしゃみ)、接触感染(水疱の分泌物や便に触れた手から口に入る)です。特に、症状が消えた後も便からは数週間にわたってウイルスが排出され続けるため、治った後も注意が必要です。

手足口病の治療法と自宅での過ごし方

残念ながら、手足口病の原因ウイルスに直接効く抗ウイルス薬はありません。基本的には、自分の免疫力でウイルスが排除されるのを待つ「対症療法(症状を和らげる治療)」が中心となります。

発熱や頭痛、手足の痛みが強い場合は、痛みを和らげるために解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンやロキソプロフェンなど)を処方します。

自宅での注意点とケア
  • 水分補給を最優先に: 口の中の痛みのせいで食事が摂れず、脱水症状を起こしやすくなります。喉にしみにくい、冷たい麦茶やスポーツドリンク、ゼリー飲料などで少しずつ水分を補給してください。酸味のあるジュースや熱いスープ、塩分の強いものは痛みを悪化させるため避けた方が賢明です。

  • 手洗いの徹底とタオルの分別: 同居している家族への二次感染を防ぐため、トイレの後や看病の後は必ず流水と石鹸で念入りに手を洗ってください。タオルや食器の共有も避けましょう。

病院を受診する目安とまとめ

手足口病は通常、発症から7〜10日ほどで自然に軽快することがほとんどです。しかし、以下のような症状がみられる場合は、重症化(髄膜炎や脳炎などの合併症)の兆候かもしれないため、速やかに医療機関を受診してください。

  • 水分が全く摂れず、おしっこの量が明らかに減っている

  • 40度近い高熱が出ている、または高熱が3日以上続く

  • 激しい頭痛や嘔吐がある

  • 意識がぼんやりしている、視線が合わない

「風邪かもしれないけれど、手足の発疹が気になる」「喉が痛くて水も飲めない」といった症状でお困りの際は、無理をせずお早めにご相談ください。

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