妊婦と新型コロナウイルスについて ~新宿グリーンタワー内科クリニック 呼吸器内科~
2020.03.02 | ブログ,新型コロナウイルスに関する話(新宿グリーンタワー内科クリニック・呼吸器内科)
現時点においては妊婦と新型コロナウイルスについての医学的情報は限られたものしか報告されていません。
先日ランセット誌らに報告されたデータでは、18人の新型コロナウイルスに感染が確認された妊婦さん(確定診断に至らず疑い症例も含む)が出産した新生児には、いずれもコロナウイルス感染は確認されていません。一方で、感染していた母と濃厚接触があった新生児が17日目に感染が確認されたケースや、出産から36時間後に新生児への感染が確認されたケースもありました。SARSやMERSでも、胎盤を通しての感染リスクは低いと報告されており、新型コロナウイルスにおける新生児の感染の可能性は同様に低いと考えられます。
少ないデータから新型コロナウイルスと妊婦、胎児、あるいは新生児への影響を現時点で断言することはできませんが、型は違うものの同じコロナウイルスであるSARSやMERSの経験から言えば、妊婦さんの影響(呼吸困難による入院、集中治療、呼吸器の使用率の増加)や胎児への影響(子宮内発育不全、早産、自然流産、周産期死亡の増加)は懸念されるべきかと思います。
また、母乳を介してウイルスが感染するかは現時点で定かではありません。但し、授乳中に咳やくしゃみからの飛沫感染は起こりえるため、感染が明らかになった場合、あるいは症状的に感染が疑われる場合にも母子を別々にする必要性が米国産科婦人科学会でも提唱されています。