心臓に関する話(新宿グリーンタワー内科クリニック・循環器内科)blog
心電図の異常と指摘されたら。。。そもそも心電図の意味、そしてどう対応したらいいかを解説します!
心電図(ECG)は、心臓の健康状態を簡単に把握することができる最も基本的な検査です。
まず心電図は何をみている検査なのでしょう?
心臓は全身に血液を送るために、365日24時間、休みなく動き続けるポンプの役割を果たす臓器であるため、主に心筋細胞からなる筋肉の塊のような組織です。
胸のほぼ真ん中に位置する心臓の状態を把握するには、休みなく働いている心筋(心臓の筋肉細胞)の活動を観察することが、一番手っ取り早いと考えることができます。
そして、心筋(心臓の筋肉組織)は電気によって動いています(収縮と拡張を繰り返す)。この心臓の電気的活動を、胸に電極をつけることで測定している検査が心電図検査です。
健康診断や人間ドックで受ける心電図検査とは正確には12誘導心電図といい、からだの外側から心臓の電気的活動を12方向から観察しています。主に、不整脈など脈の乱れや、心臓の動きや形の異常(心筋症、心膜炎、狭心症、心筋梗塞、先天性心疾患)がないかを心臓の電気的活動からチェックしています。
基本的に健康診断や人間ドックでは、心電図検査機器に自動解析機能がついており、異常の指摘があれば、それを元に健診医師が元データをみた上で最終コメントを決定します。
一見すると単調な線の羅列のように見える心電図ですが、解析は大変奥が深く、循環器専門医で実際に長く臨床経験がなければ自信を持って所見をつけるのは難しいと思います。A Iが日進月歩で我々の日常で大きな役割を果たしつつある現在ですが、心電図の自動解析に関しては、未だかなりの発展途上にあり、専門医の判断には遠く及びません。
また、健診の先生は内科全般を広く評価することに長けている一方で、循環器の専門性を持っている先生は極めて稀であるため、自動解析の所見に従い、最終結果とすることが大抵です。
不整脈の検出
心電図の重要な役割の一つは、不規則な心臓のリズムや不整脈を特定することです。
心拍が速い、遅い、あるいは不規則であるなど多様な不整脈があります。時には、心房細動、発作性上室性頻発、W P W症状群、Q T延長症候群、ブルガダ症候群や心室頻拍などは、侵襲的治療(手術など)が必要なこともあります。
これらの不整脈を検出することは、早期介入と潜在的合併症の予防に極めて重要です。
心臓発作と心電図
心臓発作と聞くと、胸の痛みや、卒倒してしまうようなイメージがあると思います。
実際、不安定狭心症、急性心筋梗塞、急性心筋炎、高度徐脈、高度房室ブロック、致死性不整脈と言われる疾患では、実際に失神したり、突然死したりする原因になります。
心電図は、これらのリスクが高い疾患の評価において、基礎的検査として今も昔も重要な検査です。
結論
心電図は、心臓の状態を把握する一番基礎的な検査です。
心臓はあなたの体内で最もダイナミックに動的に活動している特別な臓器です。心臓の鼓動は、唯一我々が自ら感じ得る、生命の鼓動でもあります。そして、このダイナミックな臓器に対しての定期的チェックや、異常所見があった場合の2次検査は必須です。
心電図で異常を指摘されたら、まずは循環器専門医が在籍している医療機関を受診しましょう。
「新宿グリーンタワー内科クリニック」や法人系列の「新宿内科耳鼻科クリニック」には、循環器専門医が複数在籍しています。心臓が原因かもしれない胸部症状があったり、健康診断や人間ドックの心電図で異常を指摘された方へ積極的に2次検査を行なっておりますので、お気軽に受診ください。
心電図Q&A
心電図とは何ですか?なぜ重要なのですか?
心拍をとらえる検査は心電図と呼ばれ、心臓の電気的活動を表します。心臓のリズム、潜在的な不整脈、心血管系の健康状態を評価します。
心臓の状態を、非侵襲的(からだを傷つけない)に評価できる上、簡便に行えるため重要な検査と言えます。
このため、健康診断・人間ドックにおける心臓疾患のスクリーニングだけではなく、心疾患の患者さんにも、臨床現場で日常的に行われます。
心電図の波形の主な構成要素とは何ですか?
心電図波形は、P波、QRS複合体、ST-T部分、T波、U波など複数の構成要素から成ります。
心臓の4つの部屋(右心房・左心房・右心室・左心室)が収縮・拡張などをくり消す中で、各々の電気的な活動を示しています。
心電図の正常と異常はどのように見分けることができますか?
標準的な心電図パターンというものは存在しますが、年齢、性別、既往歴、常用薬、体格・体型など複数要因によって、これらの標準的パターンから逸脱することがままあります。
あるいは、一度だけの記録だけでは判断が難しく、複数回の検査による比較によって正常か異常かを判断することもあります。
よって、見分けるには、循環器専門医のいる医療機関での2次検査が必要です。
不整脈とは何ですか?心電図は不整脈の検出に役立ちますか?
不整脈とは不規則な心臓のリズムのことです。心拍(心臓のリズム)がはやい、遅い場合、リズムが不規則であるなど、不整脈はこれら全ての所見を含むことばになります。
心電図は心臓発作を診断できますか?
はい、どのような疾患でも心臓関連であれば、心臓発作中の心電図には何かしらの所見が出ることが多いです。ただ、心電図だけでは判断がつかないことも多く、その場合は追加検査を行います。
虚血とは何か、また心電図でどのようにわかリますか?
虚血では、心臓自身のエネルギー源となる血液を十分に得られなくなる現象です。
つまり、心臓を栄養する血管が詰まったり、詰まりかけたり、縮んだりすることで、一時的、あるいは持続的に心臓(心筋細胞)への血流が不足します。
狭心症や心筋梗塞と言われるのがその病態です。心電図ではその虚血になっているタイミングで検査ができれば心電図で異常が見られます。また、過去に心筋梗塞を起こしていた場合も、心電図でその傷跡のような形で所見が出ます。
心電図の結果に異常があった場合、心配すべきでしょうか?
結果が異常でも、必ずしも深刻な問題があるわけではありません。たくさんの要因が心電図パターンに影響します。事前に心電図や心臓における知見を自分で得ておくことは良いことですが、結果を自己判断するのはリスクを伴います。
また、心電図のみで心臓の全ての状態を把握することは難しいため、循環器専門医のいる医療機関を受診して、必要な診察・検査(心臓超音波検査・心臓に関わる血液検査・ホルター心電図など)を受けましょう。
医療従事者の意見を聞かなくても、自分で心電図の結果を解釈できますか?
心電図の基本的ないくつかの側面をネットなどから得ることはできますが、心電図の解釈は、医師であっても経験ある循環器専門医でなければ、正確な解釈は難しいと考えます。事前にご自分で、情報を得つつ、医療機関を受診しましょう。
心電図の結果に疑問や不安がある場合はどうすればよいですか?
循環器専門医がいる医療機関を受診しましょう。疑問や不安の払拭には、それが一番の近道です。
心電図は1回だけの検査ですか、それとも定期的に受けるべきですか?
心臓の状態によります。一通りの精密検査にて、異常がなくその後のフォローアップ目的の再診察が必要な場合もあれば、必要がない場合もあります。
生活習慣が心電図の結果に影響を与えることはありますか?
カフェイン摂取、喫煙、ストレスなどの生活習慣因子は心電図パターンに影響を与える可能性があります。検査前に、関連する生活習慣について問診などに記載しておきましょう。
心電図検査を受けることによるリスクはありますか?
安全で非侵襲的な検査です。皮膚に電極をつけるだけなので、検査は短時間です。
心臓に病気がなくても、心電図に異常が出ることはあり ますか?
不安、投薬、基礎疾患などの要因によって、必ずしも心臓疾患を示すとは限らない心電図異常パターンが生じることがあります。正確な解釈には、2次検査目的で医療機関受診が不可欠です。
正確で信頼できる心電図検査結果を得るためにはどうすればよいですか?
正確な心電図結果を得るためには、循環器専門医が在籍する医療機関に受診をしましょう。心臓に関する血液検査、心臓超音波検査、ホルター心電図検査(長時間ポータブル心電図)などの検査を受ける必要があります。
当院では複数の循環器専門医が在籍しております。2次検査や心臓に不安があれば、気兼ねなくご相談・受診ください。
心肥大って言われたら ~新宿グリーンタワー内科クリニック・循環器内科~
健診や人間ドック,あるいはたまたま他の理由で受けた心電図検査などで心肥大と言われたことはありませんか?
今日は心肥大とは何か?怖い病気なのか?放置しておいてもいいのか?治療法はあるのか?などについて解説したいと思います.
基本的に心肥大は心電図検査によって初めは診断されます.ほとんどの心肥大は左心室(心臓に4つある部屋の一つ)の壁が分厚くなってしまった状態を指します.そもそも心臓は全身に血液を送るポンプであり,左心室の壁が厚くなるということは,左心室が正常よりも筋肉質になることです.正常より心臓が筋肉質になるということは,心臓の出口が狭くなっている(大動脈弁狭窄症)あるいは心臓を出た後の圧が高すぎる(高血圧症)という病態が主な原因となります.また,高血圧や大動脈弁狭窄がなくても,遺伝的に心肥大を発症することもあります(肥大型心筋症).他にはアスリート心臓と言われる概念もあり,高負荷な運動中は血圧が上昇するために心肥大を招くことがあり,マラソン,トライアスロン,自転車競技など持久力を求められる競技で発症リスクが高いと言われています.
心肥大の最大の問題は,「突然死のリスクが高まる」ということです.肥大した心臓の筋肉には必ず線維化(本来の筋肉組織の一部が硬い組織に置き換わること)があることが分かっており,この線維化は電気的に異常な回路を形成することがあるため,急に重症不整脈(多くの場合心臓の機能が停止した状態)が起こると突然死に繋がります.もちろん,心肥大がある方の中で重症不整脈を起こす人は決して多くはありませんが,正常な心臓の方においては重症不整脈はほぼ起こりないので,心肥大と初めて指摘されたのであれば一度は精密検査をする必要があります.
「アスリート心臓」は特に治療法もないし放っておいてもいいという認識は正しいものではなく,「アスリート心臓」と精密検査をせず診断された方の中には,実は肥大型心筋症など遺伝的な心臓疾患を持っていたということもありますので,一度は精密検査を受ける必要があると考えられます.
例えば「急に人が倒れて.脈が取れない」という「心停止」の状態の多くは,この重症不整脈が原因です.もちろん,重症不整脈を起こす病気は心肥大以外にも多くありますが,心肥大もリスクの一つなのです.
精密検査では「心肥大の程度やパターン」「心臓の全体の機能とその他異常の有無」「重症不整脈の有無とそのリスク」などを評価します.
当院においても,まずは血液検査,心臓超音波検査(心エコー)や24時間心電図(ホルター心電図)などを行って評価をします.重症不整脈のリスクが高ければ,植込み型除細動器,薬物治療,カテーテル心筋焼灼術などの治療が必要になることもあります.また,不整脈が重症でなかったとしても,心肥大を伴う高血圧や,何か症状があったり,原因となる疾患によっては薬物療法を主とする治療がされます.
心肥大も侮ることはできない病態ですから.初めて指摘された場合は一度は精密検査を受けましょう.